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器にまつわるひきこもごも
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パソコンの調子がすこぶる悪いので、データを保存する作業。
2002年2月6日の日記がなぜか独立したファイル形式で保存してあった。
その日の私にとって大切だったのだろうか?
この6年間で忘れてしまった記憶がいくつかあった。
書いてあることなのに思い出せない。
6年前の私と子供のころの私と現在を歩いた日記。
感傷に浸るにはもってこいのエリオット・スミスを聞きながらどうぞ。



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2002年2月6日

 一昨日寝違えた首と肩が痛くて、電気をかけてもらいに接骨院へ行く。
接骨院は自宅の裏道、中学校までの通学路途中にある。
歩き始めてハッとした。大切なものを忘れていたことに気が付いたような感覚。
小さな頃からいつもいつも妹や友達と遊びに出掛け通った道。
この道を通るのは何年振りか。10年くらい経つのではないか。
 
 家の玄関を左に出てすぐ左の路地に入る。
とんかつ屋の裏にはお稲荷様があって、小さい頃はいつもそれを覗いていた。
 それから真っ直ぐ進むと右手に今にも壊れそうな古い木造の小さな家がある。
今はもう誰も住んでいない。
けれど5、6年前までおばあさんと犬が一匹住んでいた。
いつも着物を着ていてちょっとキツイ顔をした、小さな優しいおばあちゃんだった。
玄関の脇に木の台があって、その上に犬小屋が置いてある。
犬はいつも台の上で寝ていた。
警戒心の強い犬で、近寄ると怒るのでいつもギリギリ傍まで寄ってからかった。
小学生、中学生とその家の前を通りおばあちゃんに会うたび挨拶をした。
 中学校も半ば、その犬が死んで新しい犬が来た。
その犬はとてもなつっこい犬で近寄ると尻尾を振って喜んでくれた。
たまにはおばあちゃんと一緒に話をしながら撫でたりした。
 そして何年か前、おばあちゃんが亡くなって犬はどこかに引き取られたと聞いた。
今日その家の前を通ったとき、何だかすごく寂しくて私は何かをなくしてしまった気分になった。
接骨院からの帰り道、近所を少し歩いてみようと思った。

 その家を過ぎてまだ真っ直ぐ行くと教会がある。
教会の前の家には檻に入った犬がいた。
シェパートで大きな怖そうな犬なんだけどいたってなつこい犬。
私が行くと檻の隙間から鼻を出してくる。それを触ると嬉しそうにきゅんきゅん鳴くのだ。
でもそこの家は取り壊されて、新しい洋風の家が出来ていた。
庭にはラブラドールがいた。
 それからそのちょっと先の路地を入ると新しい家ばかり並んでいる。
この道がどうだったかは思い出せないがすっかり変わっているのだろう。

 その道を抜けると大きな敷地を持つ家の前に出る。
そこは個人で経営している繊維工場みたいな所で、小さい頃よく遊びに行った。
そこにも犬がいたからだ。白い大きな犬で、名前は忘れてしまったけどよく遊んだ。
その家には私より小さな女の子がいて、その子のお母さんが優しくて私は好きだった。
犬と、そのおばさんに会いに行った。
 ある日犬が死んでしまった。
おばさんはそのことを教えてくれて、犬を家の裏庭に埋めるとき私も一緒にいた。
おばさんは泣いていた。
でもそれからすぐに同じく白い子犬がやってきた。
しばらくその子犬と遊んだ記憶があるんだけど、どうしてかいつの間にかそこの家には行かなくなってしまった。

 その大きな敷地の家の裏を通る。
両脇に昔からの家が並ぶ。そして昔と同じように、そこは砂の道だった。
私はよくその抜け道を自転車で通ったのだけど、同じように自転車の車輪の跡を見つけて
嬉しくなってしまった。きっと変わらず、小さい子が自転車で通るんだ。
 その抜け道を抜けると、渡辺さんの家の前に出る。
昔からぼろくて壊れそうだなと思っていたけど、まだまだ健在。
そこにはおばあちゃんと仲の良い老夫婦が住んでいる。
たまに覗きに行くと部屋の中に呼ばれる。
でも薄暗くて狭い家があまり好きじゃなくて、中に入るのはごくたまにだった。
ああ、相変わらずおんぼろだなあと笑ってしまった。 

 その家を過ぎると自分の家。
自分の家ながら、こっち側に来るのは何年振りでしょ。
いつも向かって家の右側ばかり通る。左側は通らない。
こんな近所なのに、東京の外れの町よりも私には遠いことが何だか不思議でならなかった。


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もう、祖母も渡辺さんもいない。
渡辺さんのおじいさんも最近見掛けない。
おばあちゃんの犬が中学生のころ死んだことも、工場のおばさんと一緒に犬を埋めたことも、
家の右側ばかり通ったことも、忘れてしまった。
東京の外れの町も、その時遠いと感じていた近所よりずっとずっと彼方の事。

いろんなことが変わっていることに、日々気付かないのだ。
知らぬ間にさまざまなことを拾い、捨てている。
悪いことではないけれど、突然に気付くと何故大切なものを失った気持ちになるのか。
酷い感傷。

感傷は必要ないって言った人がいる。
なるほど確かに、悲しい寂しいものがただただ積もるのである。
けれど必要ないとは思わない。
ただそこから逃れるには、太陽の陽と緑とおいしいご飯が必要だ。
山のカフェレストランへ行きたいなって思った。

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自己紹介:
仕事をするかたわら器を作っています。
あらゆる景色にあらゆる場所に少しだけ心に残るちょっとしたお気に入りあるように
誰かのアンテナにかすかに触れているようなものを作りたい。

猫・音楽・映画・漫画を好む。
好きな休日の過ごし方は猫と昼寝か一人でカフェ。
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